辻 文夫
代表
小樽のリサイクル着物屋 きもの辻忠
看板のない工場
昭和2年、わたしの祖父が創業したのが、「辻忠織 物加工店」。
いまはレンタル着物や、着物販売・小物の 販売がメインですが、当時は、「湯のし・湯通し・洗い 張り・シミ抜き」をする下請け専門として、札幌や小 樽の呉服店、着物問屋さん。そして、デパートから依頼を受けていました。
なので、実は「看板」がありま せんでした。
それは、辻忠織物加工店が創業したのは、小樽がまた北海道経済の中心地の時代のことで す。(昭和5年当時の小樽の人口は約14万人。札幌 は16・8万人)
三代目として 店を生かすこと
お店は小樽で したが、札幌で生 まれ育った私は、 三代目として23 歳から40年間家 業に従事していましたが、徐々に 時代が変わっていく中で、職人として、着物の生地の 種類、名称や品物の良し悪しが見分けられる様になりました。
そんな時、思いついたのがレンタル着物でした。お店 は、もともと観光のお客さんが楽しそうに行き来する、小樽の堺町通りに店を構えています。
その観光で 来るお客さんに喜んでもらうために、何かできないか と考えていました。
そこで、始めたのがレンタル着物 だったわけです。
始めた時のメインのお客さんは、外 国からのお客さん。
日本のものが珍しいようで、レン タルだけでなく、着物や小物も買ってくれました。
冬 は実は繁忙期。
雪とキモノ。これが合うんです笑。
キモノ姿での雪の中の写真は、本当に綺麗だし、お客さんにとってはよい思い出の記念になるみたいです。
外国からのお客さんは、中国、東南アジア、韓国のお客さんが多かったですね。
雪のない国から来た方は、雪にも驚いていましたが、 着物の写真が本当に雪の中で綺麗だと喜んでくれ ました。
コロナ禍で、外国のお客さんは、ゼロ。
ですが、今は状況が変わりました。
8月に入って、 札幌や本州からの観光のお客さんが、堺町通に来て くれる様になり、とても嬉しく感じています。
でも、 本当は私はキモノの良さを、日本の若い女性や男性 にも知ってほしい。洋服とは違う、心が引き締まった 感じや、雰囲気の異なる出立は、着てみて初めてわかるものです。
それはわかっていたし、やりたかったことでしたが、 これまではあまり広告や宣伝もやってこなかったん です。ですが、もっと日本の若い世代の方にも、着物の 良さを知ってほしいとずっと思ってきました。
特に小樽は、そのためにうってつけの場所だと感じ ているんです。
というのも、同じ場所でも、洋服とは 違う趣きの写真が撮れます。特に小樽はキモノの似合う撮影スポットが結構あります。
ですが、実はそれは、小樽ならではの景色や建物があるからなんです。
そう、だからこそ小樽だけでしか撮れない写真になるんです。
きっと、世界にもこんなところはそんなにないと思いますよ。明治〜大正、そして戦前の昭和が残っている。他の歴史的な建物がある街は、江戸時代前の建物があって、それはそれで風情があります。
ですが、小樽は近代の日本の成長のなかで、まだ着物が全盛だった時代の景色が残っているんです。
函館や横浜、神戸は、もっと洋風でハイカラな感じですが、小樽はもう少し泥臭い。日本風でもなく、他の街ほど洋風に振り切れていない、中間くらいの雰囲気、空気感を持っています。
だから特別だと感じています。
実はそれぐらい、小樽に残って いる景色は貴重ですし、繰り返しんなりますが、日本の近代の歴史が残っている数少ない街のひとつ。
だからこそ、大切な人との旅の思い出をもう少し だけ特別なものにして、普段よりちょっと綺麗になった姿で写真を撮ってもらいたい。と思っています。
そんな思いを、私たちが長年、関わってきたキモノで お手伝いをしたい。そう心から思っています。
小樽にいらした時の思い出づ くりを、ぜひ私たちにお手伝いさ せてください。